成人式で祖母が見せた仕事人魂

私の祖母は美容師です。
御歳85歳にしてまだまだ現役。

若い頃から美容師一本だったので、私が生まれた時もバリバリでした。
生活している家から、美容院まで徒歩5分ほどだったのと、土日は営業日でお店を開けていたので、私がチビだった頃は、美容院の方で遊んでいた記憶があります。

パーマの待ち時間中のお客さんに遊んでもらったり、
お店に置いてある女性誌を読んだり、
昔ながらのドライヤーで無駄に髪を乾かしたり、
お客さんのために祖母が剥いたリンゴを全部たいらげて怒られたり、
そんな思い出が詰まっているのです。

 

お客さんがだんだん少なくなり、それでも来てくれる人がいる限りは続けるというので、今でも現役美容師として働いている祖母は、孫から見るとかなりかっこいいのですが、そんな折、先日妹が成人式を迎えることになりました。

 

昔の美容師さんって本当にすごくて、例えば結婚式などは、一人の美容師さんとそのお弟子さんが呼ばれて、全部引き受けるんです。

つまり、今みたいに、ヘアメイク担当、ドレス担当、メイクアップ担当、と役割分担しているのではなく、トータルコーディネートで、一手に請け負っていたのだそう。
結婚式だけでなく、お正月とか、七五三とか、そういう場面も全て。

 

そんなわけで、祖母宅には着物とドレスがわんさか。
妹の成人式の着物は祖母コレクションから選びました。

辻ヶ花という染物の着物で、とても良いもの。

 

そして、85歳の祖母が我が家に泊り込みで、妹のスタイリングをしてくれました。

 

成人式当日、晴れ着を纏った妹を、式がおこなわれる会場まで連れて行き、記念写真なんかを撮っていました。

 

その時!

突然祖母が消えたのです!!

 

え?と思った瞬間にはもうそこにはおらず、瞬間移動のごとく姿を消した祖母。

一体全体どうしたのかと思ったら、いました。
結構遠く離れた場所の、知らない女の子のところに。

何をやってるんだろう、と思ってよくよく目を凝らして見ると、何やら帯のあたりをいじっている様子。

「おばあちゃん、何やってんだろ・・・」
と呆然と佇んで見守る一行のもとへ、祖母が戻ってきました。

「帯がほつれっちまってたから、直してきた」
と颯爽と帰ってきた祖母。

そう、祖母は、着崩れしてしまっていた女の子を目ざとく発見し、さっと直してきたのです。

 

カッコイイ!
なんてカッコイイんだ!おばあちゃん!
と、にわかに色めき立ちました。

 

女の子も、びっくりした事でしょう。
突然表れた老婆が着崩れを直して去っていったのだから。
きっと忘れられない成人式になったに違いありません。

「仕事人」というのを85歳になってもなお、我々に見せてくれた祖母、本当に尊敬しました。